最高裁判所第二小法廷 昭和40年(あ)1998号 決定 1966年7月07日
主文
本件上告を棄却する。
理由
弁護人川崎菊雄の上告趣意は、事実誤認及び単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由に当らない。(被告人の長男元明式公が桑山兼秋に対し、同人がまだなんらの侵害行為に出ていないのに、これに対し所携のチェーンで殴りかかり、なお攻撃を加えることを辞さない意思で庖丁を擬した桑山と対峙していた際に、武公の叫び声を聞いて表道路に飛び出した被告人は、右のごとき事情を知らず、武公が桑山から一方的に攻撃を受けているものと誤信し、その侵害を排除するため桑山に対し猟銃を発射し、散弾の一部を同人の右頚部前面鎖骨上部に命中させたものであること、その他原判決認定の事情のもとにおいては、原判決が被告人の本件所為につき、誤想防衛であるがその防衛の程度を超えたものであるとし、刑法三六条二項により処断したのは相当である。)
また、記録を調べても刑訴法四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって、同四一四条、三八六条一項三号により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 奥野健一 裁判官 草鹿浅之介 裁判官 城戸芳彦 裁判官 石田和外 裁判官 色川幸太郎)